働き方改革で長時間労働の上限はどのくらいに?確認方法も解説


働き方改革法案が通り、労働基準法などの法律改正が確定しました。一番注目を浴びているのは、労働時間に上限ができること。とはいえ、意外と理解しにくい部分もあります。今回は働き方改革法案の労働時間について解説いたします。

労働時間の上限はどのくらい?

時間外労働は月45時間、年360時間

基本的には、時間外労働が月45時間、年360時間が上限になります。年360時間を12ヶ月で割ると、月30時間になりますので注意してください。毎月45時間では年間の上限を超えてしまいます。

時間外労働って何?という方は下の「時間外労働と所定外労働は違う」で解説していますので確認してください。

月45時間、年360時間には休日労働が含まれません。休日とは「法定休日」のことを言います。法定休日って何?という方は下の「月100時間、月80時間は休日出勤も含む」で解説していますので、確認してください。

特別な事情があるときは年720時間が上限

特別な事情があるときには、月45時間、年360時間を超えることが可能です。その場合、年720時間が上限です。

720を12で割ると60時間ですので、目安として月60時間を超えているところは、特別な事情があったとしても、今すぐ対策を考えましょう。

年720時間には休日労働が含まれません。休日とは「法定休日」のことを言います。法定休日って何?という方は下の「月100時間、月80時間は休日出勤も含む」で解説していますので、ぜひ確認してください。

特別な事情があっても月45時間を超えられるのは年6ヶ月まで

特別な事情があっても、時間外労働が月45時間を超えられるのは年6ヶ月までです。ここには休日労働は含みません。

本当は労働時間を短くできればいいのですが、どうしてもできないという場合に、残業するより休日労働させたほうが法律違反にならない、という状況になる可能性があります。

もちろん、休日労働はできるだけ減らしましょう!という指針も出ているように、休日労働を推奨しているわけではないのですが、頭の片隅においておくといいかもしれませんね。

どんな事情があっても超えられないのが月100時間

特別な事情があっても、1ヶ月の上限は月100時間になります。休日労働も含めて、月100時間の時間外労働があれば、法律違反になります。

例えば、平日8時間週5日勤務の人が、毎日3時間残業し、毎週土日に合わせて10時間くらい出勤したら月100時間は超えてしまいます。周りの企業を見ていても、該当する企業は意外と多いので、早めに対策をしましょう。

複数月の平均で月80時間を超えてはいけない

特別な事情があっても、2~6ヶ月ごとの平均が月80時間を超えてはいけません。超える心配のない働き方をしてればよいですが、危ない場合は毎月平均値を出しておきましょう。休日労働も含みます。

例えば、月100時間時間外労働があると、翌月は60時間を超えてはいけません。2ヶ月の平均が80時間を超えてしまうからです。

複数の月で計算が必要です。例えば、4月の時間外労働が90時間、5月の時間外労働が70時間だった場合、6月は80時間を超えることができません。

5,6月の2ヶ月の平均だけ見れば90時間の時間外ができそうですが、4,5,6月の3ヶ月の平均が80時間を超えてはいけないからです。同じように2~6ヶ月の平均を出しておきましょう。

長時間労働の法律改正はいつから?

長時間労働は、突然辞めようと思っても辞めることができません。法律改正までには長時間労働を減らしておけるようにしましょう。

大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月

法律改正は2019年4月からになりますが、中小企業は1年猶予があり、2020年4月になります。

一緒に知っておくべき改正ポイント

労働時間の上限と一緒に知っておくべき法律改正があります。ぜひチェックしてみてください。

割増賃金率も改正しているので注意

これまで中小企業では、割増賃金率は2割5分、つまり、1.25を掛けた金額でした。しかし、これからは月の時間外労働が60時間を超えたときには、5割の割増賃金率になります。

60時間までは×1.25、60時間以上は×1.5を支払う必要があります。

うまく使うと便利なフレックスタイムにも注目

フレックスタイムとは、一定の期間の労働時間を決めておき、働く時間は社員が自分で決めることができる制度です。例えば、「出勤時間や退勤時間は自由で、月160時間働く」というような考え方です。

これまでは一定の期間とは最長1ヶ月でしたが、3ヶ月まで伸ばすことができるようになりました。そのため、8月が繁忙期だからたくさん出勤し、その分9月は出勤時間を減らす!というような使い方ができます。

労働時間の把握についても明確に記載された

もともと、会社は社員の労働時間をしっかり把握しなければならないとはされていましたが、今回は法律にしっかりと明記されました。

なんとなくタイムカードで労働時間を記録しているだけでは足りず、間違いがないか目で確認したり、パソコンの使用時間などの別の記録と、かけ離れた勤務時間になっていないかなど確認する必要があります。

タイムカードはそのままで大丈夫?

タイムカードというのは、仕事を始める時間と仕事が終わった時間を記録するためのものです。日本人は勤勉なので、一般的に9~17時の勤務でも、8時50分にはタイムカードを記録しているのが普通ではないでしょうか。

そして多くの人が、9時になる前に仕事を初めていますし、新入社員のうちに早く始めるように教えられている人も多いと思います。とはいえ、9時からしか給料が払われていない会社は多いものです。

法律をもとに争うとき、8時50分に仕事を始めたとタイムカードに記録されているのに、なぜ給料は払われていないの?というのが、前提になることがあります。

8時50分から9時の間に何をしていたのか記録は残っているでしょうか?その社員が仕事以外のことをしていたと証明できますか?会社によっては、今一度タイムカードの使い方を見直す必要があるのではないでしょうか。

間違いやすいポイント

「時間外労働」と「所定外労働」は違う

労働時間の上限では「時間外労働」が月45時間などの話をしました。「時間外労働」とは法定労働時間を超えた労働時間のことを言います。一般的には1日8時間、週に40時間が上限です。

「時間外労働」と似た言葉に「所定外労働」という言葉があります。これは、会社で自由に決めた「所定労働時間」を超えた労働時間のことです。例えば会社で「1日7.5時間、週37.5時間が所定労働時間」と決めている場合は、この時間を超えた労働時間が「所定外労働」です。

「法定労働時間」≧「所定労働時間」

「所定労働時間」は「法定労働時間」より長くしてはいけないので、多くの会社では「所定労働時間」=「法定労働時間」=1日8時間、週40時間にしています。しかし、週37.5時間や35時間などを「所定労働時間」にしている会社も意外と多くあります。

割増賃金はどこから必要?

法律上は「法定労働時間」を超えたら割増賃金を支払わなければなりません。とはいえ、会社によっては「所定労働時間」を超えたら割増賃金を支払うと、雇用契約書や就業規則に規定していることもあります。

つまり「所定労働時間」が週35時間だった場合、35~40時間の5時間分の給料に割増賃金がつくかどうかは、会社によるということです。

「残業」は意外とあやふやな言葉

よく「残業」といいますが、これは意外とあやふやな言葉です。「所定労働時間」を超えたら「残業」と呼んでいるのか、「法定労働時間」を超えたら「残業」と呼んでいるのか、それとも割増賃金がついているものを「残業」と呼んでいるのか。人によって様々です。

時間外労働の時間に上限がつきましたが、「残業時間」とは少し異なることがありますので、注意が必要です。

月100時間、月80時間は休日労働も含む

時間外労働の上限である、月100時間、2~6ヶ月の平均が月80時間には「休日労働」が含まれます。「休日労働」とは、「法定休日」に出勤した場合の時間になります。

法律上は、週に1回あるいは4週を通じて4日は休日が必要と決められています。これが「法定休日」です。具体的にいつが法定休日かは、会社で決めます。毎週日曜日を法定休日としている会社も多いですが、会社によって異なりますので、就業規則等を確認しましょう。

この法定休日に出勤すると「休日労働」です。

法律違反していないか確認する方法

「2~6ヶ月の平均が80時間を超えない」など、労働時間の上限を超えているのかどうかの確認は、少しややこしく感じるかもしれません。ここでは確認方法を1つ紹介します。

記録はわけておくと確認しやすい

「労働時間」「時間外労働」「休日労働」をわけて記録しておきましょう。「時間外労働」とは、先程も紹介しましたが、「法定労働時間」を超えた労働時間です。

特別な事情がない会社

「時間外労働」を確認しましょう。

月45時間を超えてはいけません。月22日勤務があるとしたら、1日2時間以上残業している社員がいたら、超えないように相談しましょう。

年360時間を超えてはいけません。繁忙期だけでなく、月30時間以上の時間外労働が当たり前になっている社員がいたら、超えないように相談しましょう。年間計画を記載してみてはいかがでしょうか?

特別な事情がある会社

「時間外労働」を確認しましょう。

  • 月45時間を超える月はここ1年で何回目?

月45時間を超えていいのは年6ヶ月までです。4回、5回とあるようなら早急にこれからの計画をたてましょう。

  • 直前1年間の合計は720時間を超えていない?

1年間の時間外労働の合計は毎月変わりますので、毎月合計時間を確認しましょう。また、直前11ヶ月の合計が700時間などわかれば、今月時間外労働ができる時間がわかります。

「時間外労働」+「休日労働」を確認しましょう。

  • 1ヶ月は何時間?

100時間超えていたら、アウトです

  • 2、3、4、5、6ヶ月、それぞれの平均値は?

2~6ヶ月それぞれ平均月80時間を超えていると違反です。

80時間を超えるか怪しい場合は、来月は何時間まで仕事ができるのか確認しましょう。例えば、6ヶ月間の合計は480時間です。直前5ヶ月の合計が400時間であれば80時間が上限です。

2~6ヶ月すべての値を確認して一番小さい数字が来月の「時間外労働」+「休日労働」の上限です。ただし、100時間は超えてはいけません。

なぜ720時間などの数字に決まったの?

時間は「過労死ライン」から作られている

年720時間、月100時間などは、すべて「過労死ライン」から来ています。過労死として労災認定されるかどうかのラインとして使われています。

つまり、労働基準法ギリギリの労働時間で社員を働かせているということは、社員を命の危機にさらしているという状態でもあります。社員側もギリギリで働いていると感じている人が多いのではないでしょうか。

「死ぬ前に仕事は辞めるべき」という言葉が多く広まっています。人材の確保が難しい時代ですので、「過労死ライン」を考えなくても安心できる勤務時間に変えていきましょう。

残業ありきの働き方は難しい時代になっている

日本は今、全国的に人材不足です。育児や介護、闘病など、何かしら抱えながら働く人が多数派です。

残業はできる人だけやる!できない人はやらない!という働き方改革は、たいていがうまくいきません。残業する人としない人の間に対立構造ができてしまったり、残業できる人に仕事が集中して疲弊したり、表面的にはうまくいってそうでも生産性が低くなっていたり…

働き方改革は「みんな」で取り組むことが必要です。法律改正をきっかけに、働き方改革を始めてみてはいかがでしょうか?

具体的に何からしたらいい?と感じた方は、ぜひこちらへ。まずは、あなたの会社の課題をみつけましょう。